「長寿社会」と「遺品整理」

 世界一の長寿国、日本。この長寿にはおめでたい意味がこめられています。もちろん元気で長生き、これほどうれしいことは申し上げるまでもございません。実際の日本の現状は、確かに平均寿命は少しづつ伸びています。そして医療技術の進歩に伴い、今までは命を落としていたようなけがや病気でさえ、一命を取り留めることができるようになりました。しかし、最近そのうらに潜む問題を私は目にするようになりました。
 まずは、「遺品整理」の仕事で高齢者が暮らす施設に伺ったときのことです。エレベーターに乗り、部屋まで案内されたのですが、そこまでたどり着くのに目にした光景はとてもショッキングなものでした。このフロアーにはもっとも重い障害を背負われているお年寄りが、大勢暮らしておりました。もちろん病院ではないのでみなさん治療をされているわけではありませんでした。そこがかえって私の胸を締め付けたのでした。病院であればまだ病気が治れば退院できるという希望が持てるのですが、そこにはただ「死を待つ」という現実が横たわっていたのでした。
 それまでの私は、仕事柄、亡くなったあとの光景から「人生とは何か」をよく考える機会がありますが、この施設をうかがったあとは「どのように生きていくか」ということをよく考えるようになりました。実際に頭の中で人生最期の姿を思い浮かべ、わかっていたつもりでしたが、人生観が変わった出来事でした。